

市直営を8年、指定管理者による運営となって3年。袋井市文化協会グループによる指定管理一期目は2012年3月で終えます。現時点(2011年10月)においては来期の運営は白紙の状況にありますが、月見の里学遊館が“市民運営”の看板を降ろすことはないはずです。しかし、看板を降ろさずとも、たゆまぬ努力を続けなければ“市民運営”が形骸化することは容易いとも言えるでしょう。直営時代から企画スタッフの任に就いて5年目を迎えた戸舘正史が、これからの月見の里学遊館の“市民運営”の在り方を提示します。
月見の里学遊館 11年目からのスタート~将来へのヴィジョン 前篇はこちらから

月見の里学遊館の事業においては、様々な場面で市民スタッフまたは市民サポーターと呼ばれるボランティアが活躍していることは、当館にお越しになったことがある方ならばご存知かと思う。コンサートのレセプショニストとか、ワークショップでのファシリテーターやお手伝いなど、もう市民スタッフがいなければイベントはまわらないほどだ。市民ボランティア組織「飛躍のまちづくり実行委員会」は、確かに館運営を担う指定管理者のひとつとして名を連ねているが、日常的な業務を担う事務局内に市民ボランティアが勤務しているわけではない。しかし、それでも当館が市民運営を謳う根拠はどこにあるのだろうか? 端的に言うと、自主事業の企画決定において、最終的に「飛躍のまちづく実行委員会」の定例会議(市民スタッフ全体会)の承認を得るというスキームが組み込まれていることで市民運営という形が成立している。しかし、このスキームだけを見るならば、まるでお役所が何か施策を通すときのタウンミーティングのごときである。確かに市民スタッフに対し説明責任を果たすための定例会議とも言えるわけであって、こうしたカッツリしたシステムに市民参画を落とし込むと、そのような性格を帯びざるを得ない。よって、当館の市民運営ないし市民参画とは一体何かと自問するならば、それは「ゆるやかな市民との関わり」ということになるのかもしれない。
例えば新潟県魚沼市の小出郷文化会館のように地域住民が自発的に文化会館の設立を求め、行政を動かし、館長に元大工さんが就くようなケースであれば、もうそれだけで市民運営は成立しているし、市民のモチベーションが高いので、市民主導でスキームを作り、そこで構築されたシステムは、いわば自家薬籠のものとして持続されるであろう。しかし当館の場合、「飛躍のまちづくり実行委員会」(前史として館の設立以前にコンサートを企画運営していた市民ボランティアの組織の存在があるとは言え)は、完全に行政が用意した市民参画の形なのである。館の直営時代においては、「市民が主役となり地域の文化を動かしている」というイメージを作るにあたっての"隠れ蓑"のような存在として「飛躍のまちづくり実行委員会」が存在していたことは否定できない。行政からの出向である事務局が「飛躍のまちづくり実行委員会」の決定した自主事業を遂行する実務を代行していたのだから、決して"隠れ蓑"は言い過ぎではないだろう。さらにこの市民運営を謳う公立文化施設の事務局が「市民はお客様」とばかりに市民ボランティアを奉る一方で、プロパー職員の個人性を封印し、行政的な組織論でのみ動いていたのだから、市民とフラットな関係性を築けるはずもなかったのだ。
指定管理者による運営となって3年、市民スタッフと事務局が車輪の両輪となり運営を進めることができているのは、事務局の人間が、個人性をベースに価値判断できる環境を得たことが大きい。そうなったことで、市民スタッフとの日常的な関わりが生まれてきたわけで、行政主導型市民運営の前史を持つ当館の場合は、このような市民との関わり方が、現状最もフィットしているというのが実感である。
昨年12月に開催したアートプロジェクト《Instant Scramble Gypsy》(2010年12月3日~25日)では、当館を離れ市街中心部にある元洋裁学校を期間限定の"公民館"にするという試みを行った。このプロジェクトをディレクションしたのが、全国各地で地域住民を巻き込んだユニークな作品を制作しているアートユニットNadegata Instant Party(中崎透+山城大督+野田智子)。アーティストならではの斬新な発想に加え、主催事業にもかかわらず館を飛び出して開催したことにより、これまで当館とは縁のなかった市民のサポートを得て、たくさんのボランティアスタッフがプロジェクトに参加することになった。館が外へ外へと発信し、ときには外から発信することで、コミュニティを広げていくアクションを起こしていけば、市民との関係性がゆるやかに繋がっていくはずだ。必ずしも登録している市民スタッフだけで市民運営が成り立っているわけではないのだ。市民スタッフを中心にその周縁に何層かの輪がかけられるように、ゆるやかに市民のネットワークが拡がっていき、様々な立場から月見の里学遊館を支える形が生まれる可能性をこのプロジェクトから見出すことができたと言える。館の中だけでは完結しないプログラムを作っていけば、市民スタッフを中心に館は地域住民と連携していかなければならない。そうなることで、形式性から離れ個人性をベースにした市民運営の素地ができるはずだという想いを今日も抱きながら、事務局に侵入してくる子どもたちと遊ぶ日々である。

プロフィール
戸舘正史
(とだて・まさふみ)
月見の里学遊館企画スタッフ/アートマネージャー
1977年青森生まれ。法政大学文学部哲学科卒業。出版社勤務を経て、静岡文化芸術大学大学院文化政策研究科修士課程修了。2007年4月より月見の里学遊館に勤務。館事業の企画運営、市民ボランティア組織のコーディネートに務める一方で、労音運動と鑑賞組織の研究を行う。日本文化政策学会、日本アートマネジメント学会、演劇人会議、各会員。
戸舘正史
(とだて・まさふみ)
月見の里学遊館企画スタッフ/アートマネージャー
1977年青森生まれ。法政大学文学部哲学科卒業。出版社勤務を経て、静岡文化芸術大学大学院文化政策研究科修士課程修了。2007年4月より月見の里学遊館に勤務。館事業の企画運営、市民ボランティア組織のコーディネートに務める一方で、労音運動と鑑賞組織の研究を行う。日本文化政策学会、日本アートマネジメント学会、演劇人会議、各会員。









